「FICTION ZERO/NARATIVE ZERO」 07年08月01日発行

  • まんが・アニメ的リアリズムは、寓話を書くのに実は適している。何故なら、元々生身の人間ではなく、キャラクターという存在を起点にしているから。だからこそ日本の漫画やアニメは、日本の風景を描いているように見えながら世界中でウケている。(東浩紀
  • リアリティを根拠に小説を読もうとすると、リアリティって人それぞれだよね、読み方も人それぞれだよねって話にしかならない。ライトノベル作家だってみんなそう思っているわけじゃないですか。彼らは「この萌えが俺にとってはリアルだよ!」と思って書いているわけでから。純文学の側も。(東浩紀
  • 万太郎の勤める工場では、田舎ではあったが、わざわざ駅前の便のいい場所に建屋を構え、単価の安い化学繊維を生産していた。工場の人々は、中国や東南アジア産の製品に押し捲られる現状を「どうしようもない」と諦め半分の顔で憂い、「『銀在のたまねぎ』を作っている」と自らの仕事を自嘲の表情で捉えた。
  • 万太郎は時々、壁に貼ったポスターに質問を投げかけた。「アカンじゃろ」ポスターの向こう側で、松田優作は真っ直ぐに視線とともに、易々と真実を突きつけた。
  • 万太郎がペン先が示すところを覗き込むと、職業欄に「会社員」「学生」「自営業」といった項目が並んでいた。しかし「無職」という項目は無い。故にチャン・ツィイー似の行員のペンは「専業主婦」という欄を指し示していた。
  • 児童福祉法では満十八歳に達するまでが"少年"だ。少年法では二十歳未満は全員"少年"だ。
  • 児童福祉法はその対象を、乳児、幼児、少年の分けるだけで"少女"については定義はしていないのだ。少年法は二十歳未満を残らず少年と定義しているのだ。この国には少女法はないのだ。