ベストセラーの構造 中島梓 92年12月03日発行

私が、真に重要であり、注目すべきであると考えるのは、だから、これまでは存在しなかったような現象、純粋に今日的である現象の方である。たとえば、私の知るかぎりでは、毎年ミリオンセラーが何点か登場する、というような現象は、数年前までは存在してい…

「動物化するポストモダン」 東浩紀 01年11月20日発行

いまだパソコン通信しかなかった八〇年代に始まり、現在まで、日本のネット文化の基礎はオタクたちによって築かれている。オタク系のウェブサイトや掲示板が多いというだけでなく、プロバイダのFTPサイト名にアニメキャラクターの名前があてられていたり、ワ…

「新本格魔法少女りすか」 西尾維新 04年07月05日発行

稚き頃の記憶が、恐怖と悲哀のみしかもたらさぬ者こそ、不幸なるかな。 H・P・ラヴクラフト『アウトサイダー』 魔道書の写本は実益を兼ねたりすかの趣味なのだ。振り返って本棚を見れば、各種魔道書が文字通り犇いていて、殺風景な部屋に彩りを添えている…

「"文学少女"と死にたがりの道化」 野村美月 06年05月10日発行

白い指でおもむろに本のページを破くと、遠子先輩はそれをぱくりと口にくわえ、ヤギのようにむしゃむしゃ食べはじめた。(P9) 弓道部の練習場は、体育館の横にある古い道場だった。正面に板で作った的が五つ掲げてある。他に、藁を俵状にまとめたものを台に…

「クロイヌ家具店」 大海赫 04年05月10日発行

ところが、ある日ぼくがいすをシイの木かげにおいたまま、ちょっと目をはなしているまに、やっかいなことがおこった。/シイの木のやつが、ふといみきを二度曲げて、ぼくのいすにこしかけてしまったんだ。いすにのっているみきの一部分が、シイの木のおしり…

「ママが六人???」 大海赫 05年12月25日発行

ママはひとりいればいい。ところが、弟のミオと妹のナギサは、三人もママをほしがっている。/「ナギサは、ナギサだけのママがほしいの。おにいちゃんだって、おにいちゃんだけのママがほしいと思わない?」/とナギサはいうんだ。ミオも同じ考えだ。(P7) …

「ビビを見た!」 大海赫 04年02月10日発行

ぼくは、生まれつき目が見えない。/だけど、目が見えたらいいな、なんておもったことない。/いちどだって!/そりゃあ、もと目あきだった人なら、そうおもうかもしれないよ。/でも、うまれたときから目の見えないぼくは、このままでちっともこまらない。…

「コンテンツの思想」 東浩紀 07年03月30日発行

(*東浩紀発言)僕は、『ほしのこえ』の最初の「世界、って言葉がある。私は中学のころまで、世界っていうのはケイタイの電波が届く場所なんだって漠然と思っていた」というミカコの台詞がセカイ系的想像力の特徴をよく表していると思っています。そういう…

「動物化する世界の中で」 東浩紀・笠井潔 03年04月22日発行

(*東浩紀)柄谷行人の衰弱。しかしそれは決して彼個人の問題ではありません。七〇年代以降、長いあいだ「思想」と「文学」と「政治」の言葉が接する場所で活躍し続けてきた批評家のこのあまりにも激しい凋落は、やはり、私たちの時代の何かを映している。…

「テヅカ・イズ・デッド」 伊藤剛 05年09月25日発行

「マンガ表現史の不在」には、必ず理由がある。それは、マンガ表現それ自体に埋め込まれたものだ。よって、本書の関心は必然的にマンガ表現そのものの解析と、そのためのモデルの構築に向かった。結果として見えてきたのは、手塚治虫を「起源」とすることで…

「アイデアのつくり方」 ジェームス・W・ヤング 88年04月08日発行

私はこう結論した。つまり、アイデアの作成はフォード車の製造と同じように一定の明確な過程であるということ、アイデアの製造過程も一つの流れ作業であること、その作成に当って私たちの心理は、修得したり制御したりできる操作技術によってはたらくもので…

「超日常体験報告」 象さんのポット 94年01月10日発行

幽霊を見たとか、幽体離脱体験、ポルターガイスト現象体験、UFOを見たなどの超自然現象と思われる話から、驚異的な偶然が起きた話、変わった人の話、危うく性犯罪の犠牲者になりそうだった話、実際なってしまった話、危うく死にそうになった話など、さま…

「人の心を動かす「名言」」 石原慎太郎監修 00年08月01日発行

僕の前に道はない。僕のうしろに道はできる。 高村光太郎 才能とは自分自身を、自分の力を信ずることである。 ゴーリキー なにもかもが失われたときにも未来だけはまだ残っている。 ボビー 人間は、時に誤りを犯しながらも、足をのばして前進する。時にはす…

「若い小説家に宛てた手紙」 バルガス=リョサ 00年07月30日発行

トーマス・ウルフの本を読んでいて、次のような一節を見つけたのですが、この人は作家という仕事は体の中に虫が棲みついているようなものだということに気づいていました。「というのは夢、清らかで甘く、意味不明で忘却の淵に沈んでしまった少年時代の夢は…

「これが答えだ!」 宮台真司 98年12月19日発行

知り合いの売春女子高生からこういうファックスが来ました。映画『ラブ&ポップ』を見て、浅野忠信が援交少女に「君がこういうことをしてるときに、めちゃくちゃ悲しんでるヤツがいるんだ」と説教をするシーンで、自分は誰からも悲しんでもらえないというこ…

「バカの壁」 養老孟司 03年04月10日発行

ある時、評論家でキャスターのピーター・バラカン氏に「養老さん、日本人は"常識"を"雑学"のことだと思ってるいるんじゃないですかね」と言われたことがあります。私は、「そうだよ、その通りなんだ」と思わず声をあげたものです。まさにわが意を得たりとい…

「運命」 蒲島郁夫 04年10月05日発行

リンゴは強く握ると指の跡がつき、三日もすれば腐ってしまう。優しく掴み、速くもぎとるのが難しい。スーパーマーケットに行くと、野菜や果物を買い物客が無造作に指でつまんで鮮度を測っているのをみると、人事ながら心配で仕方が無い。 「ピンクアイ」とい…

「隣のサイコさん」 96年11月03日発行

放火や強姦というのは、殺人に準ずる位刑が重いのだが、大体の場合、この二つをやった奴らは全然反省していない。感極まると、よほど気持ちのいいものなのか、必ずやったことの自慢話を始める。「いやあ、火の粉がパチパチと弾けてひゅうひゅう舞い上がる時…

「FICTION ZERO/NARATIVE ZERO」 07年08月01日発行

まんが・アニメ的リアリズムは、寓話を書くのに実は適している。何故なら、元々生身の人間ではなく、キャラクターという存在を起点にしているから。だからこそ日本の漫画やアニメは、日本の風景を描いているように見えながら世界中でウケている。(東浩紀) …

「トンデモ創世記2000」 唐沢俊一・志水一夫 99年08月27日発行

オタクは、モノの質を問わない。質が要求されるのは、そのモノを語る際の視点である。オタクの出現が世界の文化シーンに衝撃を与えたのは、実はこの凄まじくユニークなモノに対する対峙の仕方であった。 SF作家のスタージョンは「全ての物の九十%はクズであ…

「小生物語」 乙一 04年07月39日発行

京都にある「アスタルテ書房」という古本屋は店の奥で黒魔術やってそうな雰囲気。 ゲームキューブは取っ手などもついていて、鈍器として応用できそう。 第二次世界大戦中の日本において、クリスマスというのは非常に恐ろしい日だった。夜になると一斉にサイ…

「夢のなか」 宮崎勤 98年12月10日発行

1989年8月、私はひょんなことから再逮捕・超有名となる(マスコミが広く報道したのでかなり広く名が知れ渡った)。超有名人になったここいらで何か書いて出版するかと思うが、いかんせん、私には文章を書く才能がない。 出版するのは私の夢だったのです。(…

「アシモフの雑学コレクション」アイザック・アシモフ 86年07月25日発行

地球の自転は10万年ごとに一秒長くなる。地球の歴史の何十億年で、何時間も長くなった。 地球生命はたぶん、気体酸素のない環境で発生した。現在も、酸素で死ぬ微生物がいる。 紀元前435年、ギリシャの哲学者アナクサゴラスは、太陽は直径150キロほどの、赤…

「乱調文学大辞典」筒井康隆 72年01月28日

『アイロニー』昔、イギリスにジョージ・ゴードン・アイロンという詩人がいた。この詩人は無知であったため、様々な間違った言辞を弄した。無知な読者は、これを間違いと思わず、優れた反語、または皮肉とであるといって絶賛した。ここからアイロニーなる言…

「感じない男」森岡正弘 05年02年10日発行

自分は「ミニスカをはいた女の人が好きなのだ」と思っていたが、新宿2丁目の女装クラブの人が、ソファーからすっと立ち上がった、脚から腰にかけての線がまるで女性のようで、思わず欲情してしまった。男の人がミニスカをはいていても私は欲情してしまうので…

「ドコカの国にようこそ!」大海赫 75年07月10日発行

これほど醜くて、汚くて、恐ろしい顔をした人形を見たことがありまえんでした。目の玉は飛び出し、鼻は潰れていました。捲れあがった青い上唇の下から、糸切り歯の白が、ひっそりと覗いていました。額の髪の毛は抜け落ち、頬の肉は縮れていました。 さいわい…

「喪男の哲学史」本田透 06年12月25日発行

バラモン教は古代インドの宗教。カースト制度を特徴とする。バラモン(司祭)が最も偉く、クシャナ(武士)、バイシャ(庶民)、スードラ(奴隷)とつづく。死んでも永遠に身分は変わらないとされている。バラモン教の階級制に反発したところから仏教やジャ…

「ビックリは忘れた頃にやってくる」高橋章子 96年06月10日発行

最近驚いたことをアンケート葉書に書いてもらうコーナー「ビッグラゲーション」 天井に虫みたいな、もしくは鼻くそみたいなものが、いっぱいプチンプチンとついているのだ。恐怖。凍りつきゾゾメク背筋。萩原朔美が席に座って消しゴムこすってカスを大量生産…

「新書365冊」宮崎哲弥 06年10月30日発行

昔、とある作家が、全共闘世代のことを「吉本隆明ファンクラブ」と揶揄していた。 英語では人格をパーソンというが、これはペルソナが変化したもの。 「1968年にヴェトナムで戦った少尉の平均生存期間を知ってるか。たったの16分だ」(映画「英雄の条件」) …

「1冊で1000冊読めるスーパー・ブックガイド」宮崎哲弥 06年11月15日発行

1657年1月に江戸の過半が焼失する明暦の大火が起こり、戦死者は十万を越え、体制の安定に心弛みつつあった幕閣の危機感は薄く、保科正之のみが機敏に対処した。金蔵を開けて十六万両を救助金として放出しようとしたところ、老中たちは驚愕し静止した。正之は…